政宗と小十郎を出迎え、城を案内する。
そして、なんとか二人を客間まで案内した。
客間に入ると、早々に女中が入ってき、茶を出してきた。
その茶を軽く啜る隻眼の男―…政宗。
その考えは実に読みづらい。
また、そんな政宗の後ろに控える小十郎。
その鋭く、相手を射殺すこともできそうな目線には酷く不安を覚える。
いや、不安と言うのは適切な言葉ではないかもしれない。
恐怖…に近いものといったところか。
眼は到底合わせられる筈もなく、その突き刺さるような(ことを通り越し、射ぬくような)視線に
居心地の悪さとを感じると共に、その背には冷や汗が伝う。
今すぐにでも、逃げ出せる物なら逃げ出したいだが
一国の宰相として、そのようなことはできない。
その重たい口を開き、言葉を紡ぐ。
「で、ご用件というのは…。」
「分かってんだろ?”同盟”についてだ、O.K?」
「やはり、ですか…。」
の問いかけに、ニヒルな笑みを浮かばせる政宗。
そして、その言葉に「やはり」という言葉を漏らし、眉をハの字にする。
以前、政宗とは北のはずれ村付近…帰り道で遭遇した。
厭なくらいの、偶然で。そのときに少し、厭な予感はしたのだ。
だが、まさかこのような形でなるとは…。
そこで、暫く黙っていた小十郎が口を開く。
「単刀直入に言わせてもらう。奥州と同盟を結んで欲しい。」
それはもう、凄まじい眼差しで言うものだ。
これは半ば脅しではないのか…?と心中がぼやいたのは、言うまでもない。
そして、その小十郎の言葉に頷く政宗。
その口元から、笑みは絶えることはない。
笑みと言っても、あまりよろしくない笑みなのだが…。
申し出る小十郎に、は(心中溜息を零しながら)言葉を紡ぐ。
「何ゆえ、この私にその話をするのですか。自分はあくまで宰相。
そのような話ならば、文でまず国主である我が主…天白に話すのが筋では?」
そう、全くもってその通りである。
政宗は、この話をする際”宰相であるに会いたい”と言ったのだ。
普通ならば、まず文で連絡をよこしそして、国主に話をつけるのが筋である。
が、今は違う。
その国主である郁は今も天守閣にいるし、この話を知らない。
政宗達が来ているということは知っているが、同盟の話は全く以って知らないだろう。
それに加え、部屋には来るなと言ってある。
だが、がそう質問すれば今度は政宗がその口を開く。
それは大層楽しそうに、口元に弧を描いて、だ。
「ンなこと決まってるだろ?政はアンタが仕切ってるらしいじゃねえか。
当然、この手の話はアンタにするのが普通だ。you see?」
「…何処から情報が漏れたかな。」
「日ノ本中、このことは知れ渡ってる。誤魔化すだけ無駄だ。」
「…なんだかな。」
政宗の問いに溜息を零す。
政を仕切ってる、というのは…間違いではない。
正確には、政の土台を作り上げているのがだ。
また、裏仕事…蔭で見えない仕事をこなしているのもといえるだろう。
そして、郁は表舞台をやっている、ということだ。
だが、全部が全部の意思と言うわけでなく、郁の意思も勿論優先・尊重しているのだ。
は今の今まで、出羽の成長ぶりを郁の手柄と見せようとしてきた。
否、今もそうである。
そのことにより、他国からの見方は変わるであろうし、何より、なめられることはない。
それに加え、頼もしい国主と言うことで、国民からも信頼を得られるのだ。
実質、今の出羽・そして郁はそうである。
元々、その明るい性格・民を思う気持ちがある郁は国民に慕われている。
それに加え、今までも功績ということもあり絶大な信頼を得ているという事だ。
そして、はそれがベストな状態だと考えている。
自分はあくまで、補佐の器。
それに、支えて、また自分の主が大きくなると言うことが何より嬉しいのだ。
だから、今の今もこうやって仕事をしている。
は仕事を面倒くさがったりはするもの…
その仕事を放棄することはなく、執務・政に関する愚痴は零したことがない。
そんなだが、まさかここまで情報が流れているとは…。
自分としては少し、いや、かなり不覚だった。政宗にここまで読まれているとは…。
心中、深く深い溜息をつくのであった。
そして、なんだかやるせない気持ちになったのは…秘密である。
そして、自分の前でニヤリ、と妖しい笑み浮かべる政宗を見やると
小さく溜息をつき、言葉を紡ぐ。
「別に…同盟を結ぶのに、出羽は問題はないのですが。」
「Ha?どういうことだ?」
「…出羽は問題ありませんが、其方と…あと一国に問題が。」
「…濁さないで、さっさと言いやがれ。」
「…右目殿、そんなに睨まないでいただきたい。」
政宗と小十郎のせかす言葉に、は一つ息を置く。
そして、困ったように言うのだった。
「実はつい先日、甲斐と同盟を結びまして。」
「What?!甲斐と同盟、だぁ?!」
「な、なに…っ?!」
の紡がれた言葉に、政宗と小十郎が驚愕の声を上げる。
言葉は違うものの、その声色は大変似ているものだった。
眼を見開き、口を開け、計算外だとでも言うような顔である。
そして、すぐさま顔を戻し
「Shit,先を越されたぜっ…」などと舌打ちをするのであった。
そんな政宗たちを見やり、これまた溜息を一つつくと
は言葉を続ける。
「同盟を結ぶとしたら…三国同盟、になりますね。」
顎に手を当て、そう言う。
その声色、顔は先ほどまでとは違い何か意味を含むようなものだ。
そして、そんなの様子に
最初は呆気に取られた政宗であったが…瞬時にその顔は先ほどのものになり、
口元は確かに弧を描いた。
そして、その口は楽しそうに言葉を紡ぐ。
「…Ha!上等じゃねえか。OK,受けてやろうじゃねえか。」
「ま、政宗様?!」
「いいじゃねえか、小十郎。丁度いい機会だろ?」
「は…?と、申しますと…。」
政宗の言葉に焦る小十郎だが、次に紡がれた言葉に首を傾げる。
政宗は今だ、楽しそうに笑みを浮かばせている。
そして、の方を見やる。
その視線には気づくと、しばらく考え込んでいたが…ふと声を出す。
一瞬にしてその顔の眉間には皺が寄り、眼は細く鋭いものとなり
その声は低い。
「豊臣…ですか。」
「Yes.最近の豊臣の動きは、どうも食えねえ。」
「まあ、そうですね…。」
「ここらで共同戦線張っとくのも、良いだろ?」
の言葉に頷く政宗。
その横では、ある言葉を聞き渋く険しい顔になる小十郎。
豊臣。
豊臣秀吉率いる、大阪を拠点とした軍である。
今やその勢力は凄まじいもの。
次々と小大名たちが吸収されていっている。
最近、豊臣軍が何やら怪しい動きをしているのは何処も知っている。
現につい最近、天白軍も豊臣軍と対峙した。
直接的なものではないものの、実質そのようなものだ。
豊臣には、侮れぬ油断しがたい人物が居る。
それは大将である豊臣秀吉は勿論の事、
軍師の竹中半兵衛、秀吉の左腕とも言える石田三成、三河の国主・徳川家康。
他にも、兵一人一人の能力は高く、侮れない。
その豊臣が最近、動き始めているのだ。
これでは、他国は当然、困る。
困ると言うよりも、上洛を目指す上での障害になりゆるのだ。
最も、天下など望まない出羽はあまり関係ないのだが…。
だが、平和な国であるためには、その豊臣の動きは大変に困る。
それはまた、奥州も同じだろう。
理由は違えど、豊臣は障害になる。
また、ここには居ないが甲斐にとってもそうだと言えるはずだ。
政宗の問いかけには答えずに、はそれとなく話を進めていく。
「そうですね…。まあ、ここだけで話を進めるのもなんですから
虎若子殿をお呼びしましょうか。」
「Ah?…真田が居るのか。」
「ええ、昨日いらして泊まって行かれたので。女中に頼みましょうか。」
そう言うや否や、はすぐさま立ちあがり
襖を開けると近くにいた女中に声をかける。
そして、幸村を呼ぶように、と郁を呼ぶようにと言うと、女中はそそくさと去っていった。
出羽、甲斐、奥州。
これが、この三国が初めて繋がろうとしたときであった。
そして、ここからの歯車は
ゆっくりではあるものの、確実に廻り始めたのだ―−-‐…。
→
(ほふ、ははふははひふぁっふぇへふほ?)
訳:鵠、あ奴はなにをやってるの?
(…口の中のもの、呑みこんでから話そうな)
(ふぃふほほ!ふぉうひっほんいふぁふぁいふぇもほほひいふぁ?)
訳:郁殿、もう一本もらっても宜しいか?
(……旦那も、ちゃんと呑みこんでからね…)
(っん!あー、団子美味しすぎるー。)
(まっこと、そうにござりまするな!沫花…素晴らしき茶店にござりまする・・・っ!)
(…旦那…)
((どんまい)ああ、あとはお客サンの相手だよ)
(ふーん?)
あーハイハイ無糖無糖。不可抗力ですNE!←
なんだかんだ言ってシリアスって書きやすいんですよ・・・政の話、書きやすいんですよ・・・!←
よく分かんないので、全部吉切の妄想ですがね!←
次は・・・ちょっと、甘くなる・・・よ?(オイ
というか、本編更新久しぶりィ・・・。
郁と幸村が何を喋っているか知りたい人は、台詞の後を反転してくださいな。
2012.5.6