翌日。



雀がさえずり、日輪の光が差しこむ。
厨からは、ほのかに味噌の匂いがする。朝餉は味噌汁があるのだろう。
庭の一角には、洗濯物がパタパタと風にゆられている。
鍛錬場からは、勇ましい掛け声と刀が振られる音。


いつもどおりな爽やかな天木城の朝。今日もまた、日常が始まるのだ。



と、始まる筈だった。




廊下からドタドタと荒々しい音が聞こえてくる。
その足取りはとても焦っている様だ。
最初は歩いていたものの、どんどんと駆け足になっていく。

そして、とある部屋の前でその足は止まる。

と、共に。天木城に一人の大きな声が響いた。





ーーー!!!」





声の主はここ・出羽国の国主、天白 郁のものだった。

朝っぱらだというのに、何故ここまで大きな声が出せるのか…。 服は寝巻きから着替えており、薄い蜜柑色の袴、淡く白とも云えるような緋色の小袖、その上から真紅の羽織りを羽織っている。 寝起きなのだろうか、髪は少しはねている。


この人物に落ち着きという文字は見られない。
大声で人の名を呼びながら、その部屋の襖を勢い良く「スッパ−ン!」と開ける。
品性もへったくれもない。
まあ、それは昔からのことで周知の事実。女中も侍従も家臣たちも慣れてしまったことである。





「…どうしたの?」





郁の呼びかけに答えるは、部屋の主・である。
もう郁の登場のし方には慣れてしまったので、至極普通に接する。


まだ朝だというのに、彼女の机周辺には書類の山。
判子の押された書類がある一方、片付かれてない書類も山ほどある。
机に向き合っていたところを見ると、先程までこの書類たちと戦っていたのだろう…。

まだ朝餉も食べていないのに…宰相も大変なものだ。(この国だけかもしれないが…)



郁はの言葉を聴くや否や、ずかずかと部屋に入って行く。
そして、の横にストンと腰を下ろした。

腰を下ろしたかと思うと、焦ったようにすぐにへ喋りかける。





「ね、ね、ね!今日、客来るって本当!?」

「…客?」

「そう!鵠から聞いたんだけど、本当なの!?」





郁の問いかけに、筆を走らせていた手を止める。
はて、誰か来るっけか…?と脳みそをフル回転させる。
様々な思考が脳をよぎり、必死に考えた結果…


昨日、鵠の愛鷲のお蔭で戦闘から逃げ出し、城に帰って夕餉をとり、部屋に戻ったところで…部下の忍から知らせを受けた。
と、共に一通の文を貰ったのだった。




「ああ、来るよ。確かに。」

「だ、誰誰?!」

「…虎若子。」

「…誰?

「…知らないの?国主としてどうかと…。」





自分の発した武将の渾名も分からぬと云う主に、軽く眩暈を覚える
深く心で溜息をつくのであった…。

そして、気を取り直しその武将の名を紡いだ。





「真田幸村。甲斐の若虎だよ。」

「え?!真田幸村?!初めて知った…。」

「…((頭痛発動))」





やっと武将の名が分かり、尚且つ初めて知ったという郁。
本当にこの国は大丈夫なのだろうかと、不安になるなのだった。


そして、幸村がくるということを知ったので準備をする、とのことで郁は飛び出るように部屋から走り去っていった。
嵐のように訪れ、嵐のように去る…

来るといっても昼頃ということなので、まだまだ時間はあるのだが…。



そう、今日は真田幸村が天木城に来るのだ。


用件は無論、甲斐と出羽の同盟について。


前々からそれとなく同盟の話は出ていたのだが、出羽は同盟を結ぶのを渋っていた。
といっても、甲斐と同盟を結ぶのが嫌だったわけではない。

なんせ当時は、郁は勿論・も青二才のひよっこだった。
国主・宰相といえど、分からぬことばかり。政などもってのほか。
右も左も分からなかったのだ。


だが、今は違う。
時が経ち、かなり成長したと云えるだろう。
宰相としての知識を得て、全国に名が知れ渡るほどになった。
郁も一国の主として、それ相応の振る舞いができている。
また、国自体もかなり豊かになったといえる。


そこで、今改めてきちんと同盟を結ぶ、ということになったのだ。


文には同盟の件とは書いておらず、
『甲斐からの使いとして、明日昼頃・真田が伺いたく』
とだけ、達筆な文字で書いてあった。

が、八割の確立で同盟の件だろう。
というか、同盟でなければ何の用なのだ、という話だ。




”同盟”はとても重要だ。


結ぶか結ばないかで、国の未来が変わる。
その国と同盟を結ぶことによって、ある国を敵に回すかもしれない。
その国の治安が悪かったら、こちらにも影響があるかもしれない。

まあ、甲斐は上の心配は無さそうだが・・・。

良い点を上げるとしたら、もし戦があった場合、援軍を貰えるという事。
他にも、商売・軍事…色々とあるだろう。


そして、なによりこちらとして嬉しい点は。
闘う相手が一つなくなったということ。
戦を何より避けている出羽としては、嬉しい限りである。



ふと天井を仰いでみる。

この同盟でまた一つ、この国の未来が決まるのだ。
そう思うと胃が痛くなる。
民を第一に考え、民がより良い暮らしを送れるようにする。
それが上洛…太平の世を目指すための志のようなものだ。
上洛を果たしても、民たちが苦しんでいたら意味が無い。

そう考えると、同盟がいかに重要かを思い知らされる。



ふと、筆を走らせ、判子を押していた手を止める。

そして腕を組み、その場で考え事をする。
その内容は同盟のことがほとんどで、今後の国の体勢も考えている。





(これから出羽はどうなるんだろうなあ…。)




そう考え事をしていると、突如襖の向こう側から声がかかってきた。
どうぞ、と声をかければ女中がスっ、と襖を開けてきた。
そして、手をつき丁寧に頭を下げる。



「朝餉の時間でございます。」

「ああ、もうそんな時間か…有難う。今、行く。」

「失礼いたしました。」




そう云うと女中は襖を閉め、そそくさと去っていってしまった。


そう、実はまだ朝餉も取っていなかったのだ。
道理でお腹がぐうぐうと鳴ったわけだ。
しかも、同盟のことと難しいことも考えていた。なお腹が減る。



朝っぱらからここの宰相は何をしているのだろうか…。

同盟の話の前は、書類の山との格闘…。一体、どれだけ苦労しているのか。
大量にあった書類も6割程度処理されていた。
一体どれだけ集中して取り組んだのだろうか…というか国主は何をやっているのだ。



まあ、ぼやいていても仕方が無い。
『腹が減っては戦はできぬ』。
とりあえず養分補給をするため、朝餉の用意される広間へ向かったのだった。


その足取りは、朝餉に味噌汁が出て嬉しいものと・昼に控える同盟の件の緊張・気負いと複雑なものだった。



そして広間へ向かう途中、
出会った女中に城下で"甘味処・沫花でみたらし団子を30本ほど買ってくるように゛
と頼んだのは別の話。















(ねー、。結局昨日なにしてたの?)
(はい?)
(帰り遅かったじゃん。町娘ナンパしてたの?)
違うから。…別に郁が気にすることじゃないよ。)
(…執務増やしてやる。)
(やめれ。)


(お館さばあああ!この幸村、しかと同盟を結んできますあああああ!)
(はいはい旦那、落ち着いて。)
(う、うむ。それにしても、楽しみでござるなあ…戦場の鬼殿。)
((素性が知れないんだよねー、あの国…こりゃあ油断大敵っと。))














見事にBASARA人が出てこない、という罠(ちがう
オリキャラが出しゃばる出しゃばる^ω^ω^
ぶっちゃけ夢主より、郁の方が動かしやすいというね・・・!!!

一応今のうちに言っておきます。
郁や鵠、珀はBASARAキャラの誰かとくっ付く予定はございません!(ドーン
まあ、当たり前なんですけどNE!

甘くなるには時間がかかるんだぜ・・・いきなり好かれー!というのも可笑しいですからね、



2012.03.25