サンが甲斐に戻ってきた…!
森で遭遇した後、俺とサンは大将や旦那の待つ舘へ向かった。
その途中、今まで話したかったことはすんごーいあったんだけど
もう一杯一杯で、サンの問いかけに答えるので精一杯だった、っていうか!
いや、うん、緊張してたんだよねっ!
だってさ?サンと会うのって10年ぶりよ?
どんだけ長い間顔を合わせてなかったことか…っ!
あれ?どんな風に喋れば良いんだっけ?、みたいなね!
で、そんな俺様の様子を見て
サンってば、くすくす笑っちゃうし。
(目元は相変わらず仮面で見えなかったけど、口元は弧を描いてた)
なんか俺様としては凄いやるせない感じもしたんだけど、
サンったら、そりゃー凄く可愛く笑うんだもん。
余計、顔赤くなっちゃうよ、そら。
絶対、部下とか旦那には見せられない顔だったでしょーよ…
ま!そんなこんなでサンは無事、甲斐に帰還!
大将や旦那も凄い喜んでたなー。
サンも忍だから、そんな多くの人間には帰還を知らせなかったけど、
ほんの僅かな、その知らせた人達は凄く喜んでたね、再会を。
そんで、サンも「ただいま」ってにこっ、と。こう、ね。
そりゃあ、もう、ホント可愛い笑顔で言うもんだからさ
なんか、こう…俺は複雑な?心情なんだけど。
いや、サンの笑顔はマジで可愛いから癒されるんだけど。
なんかな、俺様以外にはその笑顔を向けて欲しくない…とゆーかね!
ま、要するに嫉妬…っていうか、独占欲?
んふー、俺様も立派に恋しちゃってるなー。
ったく、真田忍隊の長ともあろうこの俺様が、ね。忍もなにも、あったもんじゃないねー。
そう自嘲し、俺は内心自分に溜息を零すんだけどやっぱり、この気持ちはどうしようもない。
ホント、面倒なこった!
で、今は他の忍…まあ、俺様の部下の真田十勇士の面々と再会中。
普段、その表情を崩すことのない才蔵さえも…あの様だよ。
望月も、筧も、小助も…なんなわけアイツら!
ちょ、そんな顔今までしたことなかったじゃん?!
あいつ等が恋敵とか…冗談抜きで勘弁してよー…。
そんでサンも笑ってるし・・・。
俺様にとっては、全く面白くないんだけど。
あー、だめだめ。なんか気持ちが暗い方にどんどん行くんだけど。
サンのこと考えよう、うん、そうしよう。
と、俺が目を閉じようとすると…ふと、俺の視界が暗くなる。
あれ、俺様まだ目閉じてないんだけどな…。
で、なんだろーなー?と思って
ちょっと傷心状態なまま、上を見てみると
「佐助、どうした?気分でも悪いのか?」
「っ?!い、サン?!」
俺の愛しのサンが、俺を覗き込んでいましたとさっ!!
ちょっ、急展開すぎじゃない?!
ちょちょ、超至近距離だよっ、サン…!
そんな目で覗きこむとかね、誘ってるようにしか今の俺様には捕らえられないんだけど?!
あまりにも急展開で、声をかけられて俺はどもる。
そんでそんな俺の様子に、サンは余計頭に疑問符浮かべるし…っ!
ああっ、そんな顔も可愛いよサン!
っと、俺様相当重症。
俺は急いで取り繕って、サンに話しかける。
「長、その、いいの?」
「なにが?」
「その、あいつらとはもう話さなくて良いの?っていうか…」
そう、さっきまでそりゃあ楽しげに話してたじゃない。
俺がそう言えば、サンは一瞬キョトンとしてたけど
(その顔がまた愛らしくって仕様がない)
すぐ、またあの笑顔になる。
あ、今のサンは仮面を外してるから素顔なんだけど。
で、「いいんだよ」と言うもんだから首を傾げる。
するとまた、サンは微笑む。
ホント綺麗に笑うし、よく笑うよね。
そんで、俺に言葉を紡ぐ。
「もう一通りのあいさつは済んだしね。
それに十数年ぶりに佐助と再会して積もる話もあるし」
「っ!」
もう、不意打ちだよ、不意打ち・・・!
目元と耳が熱くなるのが嫌というほど分かる。ああ、やばいやばい。絶対今の俺様、顔赤いよ。
思わず片手で顔を覆う。
けど、そんなの意味がないって分かるよ、うん。
そんな俺を見て、またサンくすくす笑うしさ。
ホント参るよ…。
「今宵は酒でも酌み交わしながら、積もる話でもしようか」
「…忍がそんなのでイイの?」
「大将には許可とってあるし、今日ぐらいやってもバチは当たらないよ」
そういうサンの手には、一本の酒瓶が。
貴方、何時の間に持ってたの…って話なんだけど。まあ、そこは深く追求しないでおこうかな。
「…ま、いいかっ」
なんか、どうでもよくなってきたわ。
ホントサン相手じゃ敵わない。ってか、敵う気がしないね。
酒瓶はあるみたいだけど、盃はあるのかな?
ないようなら、俺様用意しなきゃ。
ああ、つまみはいるのかな?俺様、サンと呑んだことないから分かんないわ。
あー、なんか緊張してきたんだけど!
何を話そう?
なんて色々考えちゃうのは、俺様の性分みたい。
ちょっと心の中でブツブツ唱えてると、ふ、と甘い香りがする。
あれ?なんか覚えのある香りだな…。
決して気持ち悪くなるような甘い香りじゃない。
よく、おひいさんとか使ってるやつみたいなのじゃーない。
凄く自然な香りで、花みたいな香りでもあるんだけど・・・。
蜜柑みたいな林檎みたいな…あー、なんて言えばいいんだろ?
うん?
この香りすげえ身近に感じてた香りだよね・・・?
俺様、この香りすっごい好きだもん。
あ、
この香りって
「…」
顔をあげてみれば、そこにはサンの顔。
あれ、なんか先刻もあったよねーこれ。
あはー、サンのお綺麗なお顔が至近距離に…
うん?
…
「っ??!!」
「はは、佐助気づくの遅いなあ。どうした?」
ちょ、ちょ、ちょおおおおおおおおお??!!
な、なんでこんな、ち、ちか?!
さっきとは比べモンになんないよ?!
今の俺様とサンの距離。
ほんと、鼻と鼻くっついちゃうんじゃない?ってぐらい、いやホント。
お互いの息が肌にかかる。
サンのまっすぐな、その綺麗な瞳が、すぐそこに。
その瞳には、まぎれもなく俺様が映ってる。
あ、なんかイイかも、それ。
あ、サンの睫毛ながーい。
と、俺様まず落ち着こう。
色々な考えがぐるぐると脳内を廻る。
ああ、やばい。目も廻りそう。
目元が、耳が熱くなってきた。
「佐助」
「っは、はい?!」
サンの声に、これでもかというほど反応する。
その異常な反応振りといったら…ホントに俺様、忍?
や、でも、これは反則でしょーよ。
想い人が、自分の耳元で、その声で、自分の名を囁くって。
ああ、本当、心の臓がもたない。
しかもなに?
サンってば、この距離で俺の方ガン見してるじゃない?
この、超!至近距離でよ?
ホント、俺様はどこ見ればいいわけ?!目のやり場に困る、ってゆーか!
そんで耳元で、また、サンは囁くんだ。
「私、もう長じゃないんだけどさ…、って呼んでくれないのか?」
「っ、え?!あ、はい?!」
予想外の展開すぎるんだけどっ!
確かに俺は心の中では名前呼びしてたんだけど、
実際話すときはずっと「長」だったなあ…ああ、無意識だったわけだ。
てか、サン。
今、ここで、この状態で其れは反則じゃない…?
すぐ近くでサンが、俺の口が開くのを待っている。
ねえ、サン。
これって、俺様期待してもいいわけ?
てか、期待しちゃうからね!
その後、サンと酒を酌み交わすんだけど…
満月が綺麗らしかったけど、俺様はそれどころじゃなかった。
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