愛してるよ、愛してる。ずっと愛してた。
陽炎の街にさよなら告げ、君との日々に口付けを。愛しい君の姿は、もう見えない。
別離(さよなら)だけが、僕らの愛だ。






そんな言葉が俺の脳内を染色する。やけに寂しい、ギターの音に乗って。


窓から吹き込む風。カーテンがひらりと舞う。むしむししとった部屋に、やけに涼しい風が入りこむ。 部屋には先輩と俺だけ。 先輩はギターを抱えて、俺はその先輩の前にすわっとる。








「で、どうだった?」
「・・・はあ。どうだった、言われましても」












俺がそう言えば、苦い顔をする先輩。いや、そういっても俺なに言えば良いか分からんのですよ。


先輩は所謂、ミュージシャンの類に入る人で。友人とバンドを組んどるらしい。 俺も何度かライブ見に行かしてもろたけど、凄かった。なんや、うまく言葉で表現できひんけど。 そんな先輩は新曲を作るたび、とりあえず俺に一番に聞かしてくれはる。 先輩が歌うんは、恋愛モンばっかで。(まあ、世の中の曲の大半がそうなんやけど) そんでも、甘ーいやつとか片思いモン(そんでも、最終的にはハッピーエンドなやつ)を歌う。 そんな先輩が、今日は、ちがう曲を披露してくれはった。 いつもはエレキな先輩が、今日はアコギだった。


その曲っちゅーのは所謂、別れのラブソング、ゆーもんで。 とある恋人の話。二人は、そらー幸せな日々を過ごしとったんやけど。ある日、突然。彼女が死んだ。 そんな話。 割かし、どこにでもありそうな曲なんやけど、なんでか先輩が歌うと不覚にも泣きそうになった。 なんでかは知らんけど。 柄にもなく、なんだか胸の方が・・・こう、ツ−ンと来たんや。










「・・・先輩、今回はかなりちゃいますね」

「なにが?」

「曲の雰囲気、いつもとちゃいますやん。どないしたんですか?」

「あー、メンバーにたまには違うの作れ−言われまして。方向転換しましたー」

「さいですか・・・っちゅーか、先輩こんな曲も作れたんや」

「その台詞はどういう意味かな、財前くん?」

「そのまんまっスわ、先輩の性格からして作れそうにないと思うたわ」












あー、もう俺なに言うてんのや。 本当は先輩のこと、誉めたいんすわ。誉めたいんやけど、どうも口が動かへん。 この性格はもう直らんと思うんやけど、やっぱ憎いわ。 ヒヨコ先輩らには悪態ついても何も思わへんのやけど、先輩には違う。 口の悪い俺自身に心底溜息をついていると、目の前の先輩が笑う。 笑うゆーても、苦笑いに近いねんけど。そんでも、眉下げて、目を細めて笑っとる。 はい?今の流れで、なんでそうなるん。おかしいやろ。









「今回の曲はさー。想像したんだよ」
「・・・はい?」
「もし財前くんが、この歌の彼女の立場で。私が彼氏の立場だったらー、って」












・・・この人、いま何て言うたんや。 この曲の彼女が俺で、彼氏が先輩?いや、そもそも性別反対やないですか。 いや、それはこの際どうでもええんやけど。 え、いや、なんで俺? ちゅーか、俺だと想像して・・・この曲になったんか? 先ほどまで聴いていた曲の歌詞を思い出す。と、共に鼓動が早鐘のように鳴るのが分かった。









「というか、今までの曲も財前くんだと思って歌ってきたんだよね」
「・・・ホンマっすか」
「うん、ホンマ」
「・・・そないなこと言われたら、俺、いいように捉えますよ?」
「捉えてほしいから、言ってるんだけどな」












・・・ホンマ、この人にはかなわんわ。

先輩の作った曲では、彼女役であるらしい俺は死んどったけど俺、先輩残して死ぬつもりなんか更々ありませんわ。 むしろ、先輩も一緒にひきずりこむっすわ。 嫌な彼女で、堪忍な。























さんと付き合い始めて数日。 新しいCDを出したそうや。なんでも、今までの曲激選したアルバムやとか。 俺は自腹で買おう思うとったんやけど、さんがその前に俺にくれはった。 それはそれで微妙な心境なんやけど。 (俺としては、彼女の出したCDとかやっぱ己で買いたいっちゅー話なん) (ちなみにアルバム名は、「twinkle LoVe」や。見た瞬間、思わず吹いたわ)


そのCDには、あの日俺が聴いたあの曲が入っていた。 悲恋だと、悲しい哀別の曲だと思っとった曲やったけど。 あの曲にはまだ続きがあった。 その続きを聞いて、歌詞カードに挟まれとった「未練タラタラな彼氏でごめん」というメモに 俺はただ、笑うだけやった。 いつも低い体温が、上昇した気がした。








愛してた、いや愛してる。ずっと愛してる。
君との思い出抱いて、今日も僕は眠る。
来世まで、その来世まで僕はずっと君を愛すのさ。












「・・・やっぱし最後はハッピーエンドやんけ」









ラプソディーは色褪せない
(メロディにのせた、君への溢れんばかりの想いよ、届いてくれ)






























テニプリ熱が凄すぎて、書いちゃったよな作品。
財前が可愛すぎて困っちゃうよ。なにあの子、生意気だ可愛い。
あれ、私って生意気な人がタイプなのかアルェ←

SSSのつもりで書くと、こんな長さになりました。
こんぐらいが丁度いいですかね・・・?




2012.5.19