忍足謙也、15歳。四天宝寺中学校テニス部所属。 好きな女の子のタイプは、無邪気な子。 今までの彼女は0人。いや、そんでもモテとったんやで?本気で好きになれる子が居らんかっただけや!

そんな彼女居らん歴15年の俺が、先日彼女ができたんや・・・!!





「・・・先輩、なにをニヤけとんのすか。キモ…気色悪いっスわ」

「どっちにしろ同じ意味やんけ!」

「そら、そういう風に言っとりますから」

「なっ、減らず口なやっちゃな・・・!」





ホンマこいつの毒舌は直らんわ。むしろレベルアップしとる気ぃさえする。

俺の横でユニフォームから制服に着替えとる奴・・・財前 光。俺の(かわいくない)後輩や。 部活が終わり、部室でいそいそと着替えとると、俺に声をかけてきた。 開口一番、腹の立つやっちゃな・・・! 部活でつかれた先輩を労わる気持ちは無いんかいな。





「ま、けどええわ」

「・・・はあ?」

「なんや、今日の謙也はんはえらい上機嫌やなあ」

「ふふふ、分かるか?」





銀に言われて、余計に機嫌が上昇する。現金な奴やと分かっとる。 けど、しゃーないやろ。俺、いまめっさ機嫌ええんや。 菩薩の如く寛大な心で「ええわ」と言った俺に、隣から財前は哀れむような視線を向けてくる。なんや失礼やな!
ベルトをしめていると、タオルで汗を拭いとる金ちゃんが喋ってくる。





「なんでなん?」

「なんや、金ちゃん。知らんのか?」

「なん?」

「謙也、最近彼女できたんやと」

「ええええええええっ?!」





ふふ、せやせや。俺はせやから上機嫌やねん! 俺が答える前に、俺の傍に居た白石がご丁寧に説明をする。(なぜか白石は当日に知っとった。怖いわ!) っちゅーか、金ちゃん。そこまで驚くことないやろ?俺かてモテるんやで?!

金ちゃんの動揺した声をよそに、俺はエナメルに荷物を詰めこみ、ロッカーを閉める。 ふと携帯のディスプレイを見れば、「17:55」という表示。よっしゃ、まだ間に合うやんな。 今からダッシュで向かえば・・・充分間に合うわ。


エナメルとスクバを肩にかけ、部室の扉前へ向かう。





「ほなお先に、お疲れさんな〜」

「おー、彼女さんに宜しく言うといてや」

「また明日な」

「ほなな〜」

「ええっ、け、謙也ァ!誰と付き合うとるん?!」





そんな急がんでも今度紹介したるわー♪ 金ちゃんの叫びを背中で聞きながら、俺は浪速のスピードスターの早さで目的地へ向こうた。













「ま、待ったか?」

「あ、謙也。部活お疲れ様」

「お、おん」





急いで向かった先は、学校の図書室。閉室時間間近なもんやから、人はあんま居らん。 静かで、照明も少ないもんやから正直不気味や。
そんな図書室の一角で、本を読んでいた彼女。 声をかければ、顔をあげて微笑んで返事をしてくれる。やっぱかわいいわ。癒しや。 部活の疲れなんか吹っ飛ぶっちゅー話や!


彼女の名前は、。 少し茶色がかった黒髪(地毛らしい)。長さは肩ぐらいで、前髪を縛っとる。 たまに下ろしてたりすんねやけど・・・なんやギャップがまた、ごっつかわいいんや。 っちゅーか、何しとってもかわいいんやけどな! 肌は白うて、身長は俺よりちょっと低い160後半。女子にしたら高い方やで。 (ま、ちょうどええ身長差で助かるんやけど) 目はパッチリしとって、化粧はしとらん(そんでもごっつかわいいねん!)。 話し出したら止まれへんわ。

いや、まあ。結論言えば、そんなは俺の彼女や。俺はそんなの彼氏。言ってまえば恋人っちゅー話。 今日上機嫌な理由の、初めての彼女!想い続けて3年間・・・俺の想いは、やっと届いたんや! (いや、それまで俺がへタレで告白せえへんかったんが原因なんやけど)


本を閉じ、スクバに仕舞う。なんや、私物やったんか。
「行こっか」と声をかけられ(俺は「お、おん」とどもってしまう)(やっぱ慣れへんのや)、 図書室を出る。彼女は図書委員ではないんやけど、本好きやからよく図書室に居る。 そんなもんやから、先生らも信頼(?)しきってに鍵を渡したんやろ。 せやから、こうやって俺の部活を遅くまで待っとっても問題ない。 けど、やっぱこんな遅くまで待たせとるんは偲びないわ。

そんな考えが顔に出とったんか、隣を歩くが笑うた。





「時間なら気にしないでいいよ。私、待ってる時間好きだし」




こうやって一緒に帰れるんだし、と零す彼女は・・・ホンマに・・・もう!


・・・抱きしめてもええ? なん、なんでこんなかわいいん!ごっつかわいい・・・!なんやの・・?! きっと、「待ってる時間は読書をしているから大丈夫」っちゅーのもあるんやと思うけど、 そんでも嬉しい。 いや、だって付け加えの言葉聞きました?奥さん。 なんぼなんでもかわいすぎるやろー!俺は今すぐにでもを抱きしめたい。 いや、もう頭撫でるだけでもええわ。そんでも、それを行動に移せない俺。憎いわー!



玄関を出れば、それなりに寒い。おお、さむ。 まだ10月とは言え、冷えるやんなあ。今年は何や、気温の変化が激しいしなあ。夕方やし、余計か。 ふと隣を見れば、揺れる彼女の手。

・・・いや、ええやろ?俺、彼氏やし。ええやんな? いや、でもまだ付き合うて一週間も経ってへんし・・・いやいや、でも。 もしかすると、寒いかもしれへんしな?ほら、見い。ちょっと指先赤いやんけ。 いや、でもアカンやろか。ここで手振りほどかれたり、弾かれたりでもしたら俺立ち直れへんわ。 せやけど、やっぱり





(・・・ごっつ触りたい)




やっぱ俺も男やねん。彼女に触りたい思うんは、普通やろ。 あかん、心臓うるさいわ。バクバクいうとる。俺どんだけ緊張しとんねん・・・!





「な、なあ」

「うん?」

「手ぇ繋いでも、ええか・・・?」





っよし、俺は言うた!言うたで! いや、ここはこんなん言わんでさりげなく手ぇ繋いだ方がよかったんとちゃうか・・・? やばいな、もしそうやったら俺アカンやん。今まで散々こういうシチュエーション想像しとったやん! その場になるとでけへん、って俺どんだけへタレやねん。ああ、ごっつ自分が嫌んなるで。

俺の言葉に、隣のはキョトンとしとる。 ああああ、完璧アカンやん・・・!駄目や、終わったやろ俺・・・! どこに視線向ければええんや、直視できひん!絶対いまの俺の顔赤いわ!





「?いいよ?」

「っ、ほんま、か?!」

「?うん。というか、そんな聞かなくてもいいのにー」

「そ、そうか。は、はは!せやな。ほ、ほな・・・」

「どーぞ」





ええんか・・・?!これ幻覚、幻聴やないよな?!

どーぞと差し出された手に、おずおずと手を伸ばす。 ゆっくりと指を絡ませれば、華奢な指が俺の指に絡んできた。 思わずぎゅ、と力を入れてしまう。あ、あかん!調子乗り過ぎや! と思えば、今度はの指を絡ませる力も強なった。
指、ほそっ!あったか!やわらか!! あかん、これは癖になりそうな感じや。俺より小さい手に、めっさ頬が緩む。

隣を見れば、少し頬が赤い。・・・自分、可愛すぎやろ。 俺の視線に気づけば、にこと笑うんや。あかん、ホンマあかん。ちゅーしたい。


あ、せや。今日は言いたいことあったんや。





「な、。明日、休みやん?」

「うん、そうだねぇ」

「あー、っと。あんな、その、明日・・・で、デートせえへん?」





よっし、言うたで俺は!よう言うた!ようやった、俺! 1週間経ってもないのにデートは早いか?いや、ノースピードノーライフっちゅー話や!

どうや?と聞けば、の赤い頬がさらに赤くなる。 ・・・かわいすぎんやろ、自分!ごっつ可愛いごっつ可愛い!



の返事に、思わず飛びついてしもうたんは15秒後の話や。












只今、純愛飛行中

(繋がる温もりに、ふたり笑いあう)
















2012.10.7 UP