あてんしょん!!
中篇の「赤鬼」設定。幸景視点です。一応、幸村が7歳ごろのお話ってことで!!
 










          「幸村、今日は何の日か知ってるか?」


          「?今日、でござるか?」
          「そう、今日だよ」
          「・・・?」





          今日が何の日かと問いてみれば、首をかしげる弟の幸村。まるで分かっていない様子だ。
          今はお昼。ちょうど幸村との鍛錬が終わって、縁側でくつろいでいたところだ。

          今日は節分だ。確か、お館様が色々と準備をしていた気がする。
          あの御方は本当に、こういう行事が好きだからなあ・・・。

          隣の弟はいまだ、しきりに首をかしげているのでネタばらし。




          「節分だよ、節分」
          「せ、つぶん??」
          「そ。今年一年がよい年であるようにと、色々するんだけどね。中でも豆まきは絶対だよね」





          確か、そんな意味があった気がする・・・。俺とて、詳しいわけではないのだが。
          俺がそういうと、幸村はさらに首をかしげた。





          「豆まきとは・・・豆をまいてどうするのでござるか?」
          「豆をまきながら『鬼は外、福は内』って言って悪いものを外へ、良い事が来るようにするんだ
          鬼のような怖いものがいると、福は来てくれないだろ?」
          「!!」






          これまたうろ覚えの知識だが。大体そんな感じだろう。
          俺が豆まきの説明をすれば、肩を大きく揺らす幸村。心なしか、その顔は吃驚・・・しすぎだ。
          瞳は見開かれ、口をポカーンと開けている。(額には汗が・・・??)


          (そんなに豆まきが嬉しいのか・・・?)

          よほど嬉しいのだろうか。そうだよな、俺も餓鬼の頃はこの行事が好きだった。
          父上が鬼役をやっててくれてたっけ・・・。ああ、容赦なく豆をなげつけてた俺が恥ずかしい・・・。

          幸村が豆まきをしたいのだと考えた俺は、すぐさま立ち上がる。







          「豆はあったかなー、ちょっと厨に行ってみるか・・・」




          お館様のことだから、きっと大量に準備されているはずだ。
          ほんの少し心が浮き立ち、俺は早速厨へ向かおうと踵を返したのだが・・・

          その瞬間、




          「そ、その必要はないでござる!!!!」




          幸村に叫ばれた。吃驚して後ろを振り向いていると、なんだか慌てた様子の弟。
          いや、慌てたというよりも泣きそうな・・・? そ、そんなに自分で豆を取りに行きたかったのか?






          「な、なんでだ??」



          顔を真っ赤にして震え気味の弟に、問う。
          すると、その口からは予想もしてなかった言葉が紡がれてきた。






          「お、鬼を退治するとなれば、あ、赤鬼である兄上も、い、いなくなって・・・!」
          「・・・幸村」
          「兄上は、優しい鬼であって、怖くなんかないでござる!」
          「そう、か。」






          ・・・まさか、幸村がそんなことを考えていただなんて思いもしなかった。
          嬉しい反面、少し呆れてしまう。

          俺が優しいだなんて言うが、それは幸村が弟だからだ。
          戦場での俺を見れば、きっとそう言えなくなる。鬼以上に、俺にふさわしい名はないだろう。
          赤鬼と言われるのは、戦装束が赤揃え・・・というのはもちろんだが。
          返り血をより浴び、紅を戦場に咲かすから。

          この、赤にまみれた手を。幸村は、恐れるだろうか?



          (それが、普通、だよな)



          ふと目の前の弟を見てみる。その瞳は、真っ直ぐで、曇りがない。
          そんな弟に思わず苦笑がもれる。







          「そうだな。 じゃ、佐助を鬼にするか
          「っはい?!!」
          「む、佐助。いつのまにそこに居たのだ?」




          幸村の言葉のとおり、いつのまにか佐助が。
          なんとなく誰かの気配が近づいてるなーとは思ったが、まさか本当に佐助だったとは。






          「いや、お館様が幸景の旦那を呼んでたから・・・って、さっきのどゆこと?!」
          「はは、気にするな。じゃ、俺はお館様のとこ行ってくるから」
          「うむ!いってらっしゃいませ、兄上!!」
          「おう。豆まき、がんばろうな!」
          「無論にござりまする!!!」
          「え、ちょ、ええええ、」





          佐助の悲鳴を背に、お館様のもとへ向かう。






          (優しい、か)





          せめて、幸村の中では優しい・福を呼べるような鬼でいよう。











       赤鬼と豆まき













2/3〜2/25と無駄に長い間晒していた、赤鬼の節分話でしたー
もう幸村は兄上が大好きなんだよ、あにうえあにうえ!^q^

そして、果たしてこの時代に、節分という風習はあったのでしょうか←
政宗も多分、こんな感じだったんだと。信じる。え?書きませんy((
おそまつさまっ!!